昆虫の発育

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昆虫に関する二つの法則を紹介します。

昆虫によって、受精から死までの一世代の姿 (生活史といいます)、一年のうちの季節進行に伴う姿 (生活環といいます) が変わってきますが、この生活環の調節には温量が大きくかかわっています。

生活史 世代/年 越冬時期
イネムシゾウムシ 一年余 一世代 成虫
アメリカシロヒトリ 2-3ケ月 二世代
モモアカアブラムシ 3-4週間 20世代位
ササウオタマバエ 1-5年 1-1/5世代 幼虫/蛹

有効積算温度の法則

発育は体内で起きる化学反応であり、変温動物の場合、外気温度によって発育が左右されます。(化学反応速度は、普通10℃の差で2-3倍変わるといわれます)
発育所要日数は、温度が高いと短く、温度が低いと長くなり、発育に有効な温度 (有効発育温度) に逆比例する関係になります。、式で表わしますと、

     y(x-a)=k y ; 発育所要日数 (日)
               x ; 温度 (度)
               a ; 発育限界温度(発育ゼロ点) (度)
               k ; 有効積算温量 (日度)・・昆虫により一定。
有効積算温量 k と発育限界温度 a を求めておけば、その年の気温 x から世代数の推定が出来ます。すなわち、その年の発育限界温度以上の日と温度を掛けて積算した有効積算温度 (日度) を、k で割ると理論世代数が出ます。
休眠の覚醒時期がはっきりしている場合、第一世代の成虫の発生時期を高い精度で予測することができるとされています。

ちょっと休憩


等比級数則

生物は、様々な生活環境の中で、多くの種個体群が共存して生息しています。このような生態系の中では、食うものと食われるものとが相互に個体群の密度に影響しながら常に変動しつつ、なお長い時間で見ると安定して調和を保っています。この安定性は、生態系が複雑で種の多様性が大きいほど高いと考えられます。多様性を式で表しますと、次のようになります。
動物群集を構成する種の量的順位
X と個体数 Y との間には次の関係が成り立ちます。これを本村の等比級数の法則といい、経験則です。
        
Log Y = b - aX   b ; 0番目の種の個体数
                        
a ; 群集の複雑性
            a 大 単純系   a 小 複雑系

*
*
Y *
*
*
1 2 3 4 5 6 7 8 9
X

単一な植物を栽培する田・畑の生態系は、a の値が大きい、単純な生態系となります。すなわち、量的順位 1〜2 のものの数が非常に増えやすくなり、害虫化することとなります。単作を混作 (数種の作物を混ぜ込みで栽培する) にすることで害虫の発生を減らせられるという報告もあります。